■開催日時/概要
第1期 組織進化プロセスファシリテーター養成講座
入門講座 インテンシブday1
日程 2021年7月16日(金) 13:00-18:00
場所 オンライン
オリエンテーションを通じて、多くの参加者から「組織のあり方を変えていけるような、ファシリテーションの力を身につけたい」との期待が寄せられました。
この組織進化におけるファシリテーションとはなんなのか。それは、「会議をうまく仕切る」「落とし所に持っていく」といった、一般的に言われる会議進行のファシリテーションとは大きく性質が異なります。ToBeingsでは、「組織がより良い状態に進化する過程に伴走しながら行う、あらゆる見立てや働きかけ」と捉えており、今ここの組織や関係性を紐解きながら、行う会議や、1on1のコミュニケーションはもちろん、業務のフローやルール、時にオフィスでの人との動きのデザインまで含んでいます。
またゴールも全く異なります。その組織の進化の分かれ道であれば、元々想定していた結論を手放して、組織が向き合う課題を設定し直すことが必要な場合もあります。さらには、司会進行の立場からではなく、末席の議事録係からでも、ちょっとした一言で変化をもたらすことも。参加者によるファシリテーションと捉えています。
このように活用場面や応用の幅が広く、捉え所ないように思える「組織進化におけるファシリテーション」。その全体像を理解し、自分で組織進化に取り組んでいく感覚を掴み取っていくための、2日間のインテンシブが始まりました。
■総合演習:会議の裏側に流れる組織課題をファシリテーションする
インテンシブのメインの演習は、「ロールプレイング型ファシリテーション演習」です。
このワークは、決まったシナリオを演じる一般的な「商談のロープレ」などとは違い、実際に企業の中でよく起こっている組織の難しさや葛藤を凝縮したような会議のシチュエーションにおいて、そこに参加する登場人物に心身ともに没入し、その役を体現していくロールプレイングです。
その中で、皆で会議を即興で進行し、場の重さや難しさを肌身で感じながら、組織が進化していくきっかけや兆しを見つけ、動かしていく練習をします。
やり始める前は、「いきなりファシリテーター役!?」「普段の自分と全然違う役!?」っと、ドキドキされたり、不安な様子の方もいらっしゃいましたが、始まると皆さん役に飛び込んでいただき、思い思いの体験を味わっていただきました。
では、具体的にどんな学びがあったでしょうか?ロールプレイの一場面をピックアップしてみていきたいと思います。
■「場が変わり、組織が動き始めた」ある瞬間
ロールプレイの中には、皆さんの感情が動き、組織の本質的な課題に踏み込んでいくような瞬間がいくつかありました。例えば、こんなシーンがありました。
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<聞くことから平行線を抜ける>
会議の途中、関係性を高めようと全員合宿を提案する積極的な部長役Aさんと、その合宿に時間を使うことを渋る部長役Bさんとの間に平行線が続いており、だんだんとBさんの声を大きくなっていました。
ファシリテーターが、Bさんの頑なさの中に、ある重たさを感じ取ったのか、合宿についての議題を傍に置き、Bさんの現場の様子に話を向けます。すると、Bさんは、息急き切ったように語り出しました。それは、これまで必死でサービスを守り続け、疲弊していく部下を必死で支える苦悩でした。
しばらくの沈黙の後、Aさんは、ほっとため息をつき、「こんなに切迫している状況だって知らなかった。しかも、自分たちが良かれと思っての行為がそれを加速させていたなんて」と言いました。その目は少し落ち込み、同僚に対する申し訳なさが宿っているようでした。
Bさんは、Aさんの声を聴きながら、何度も首を縦に振り頷いています。続けてAさんが提案します。「じゃあ、今回の企画は、目的を変えて、なくせる仕事を見つける企画にしようという場にしてみてはどうだろう?」その瞬間、Bさんの顔がパッと明るくなり、目が輝きます。姿勢も前のめりになり、画面にも大きくBさんの姿が映りました。
<振り返りの場面にて>
後から、振り返りの場面で話を聞くと、Bさんは、Aさんの発言を聞いた時、「敵側だったAさんが、味方になってくれた!」と言う嬉しさを感じたと言います。
AさんもそんなBさんの様子を見て、一緒に協力していきたいと言う仲間意識を強くしたそうです。この瞬間は、今までロールプレイの中の対立軸の一つだったAさんとBさんの間に相互理解と協力が生まれた転換点でした。
■演習からの気づき:それぞれの立ち位置からのファシリテーションの可能性
ワークを振り返って、さまざまな感想が述べられました。
◎ファシリテーターとして、参加者が声を荒げた瞬間は、場が硬直して大変だった。頭が真っ白になる瞬間があったが、後からみんなで振り返ると、そういう瞬間が重要な変化の入口なのだと実感した。また、その背景に、無意識に「落とし所」に持っていこうとしている自分に気がついた。
◎部長として議論しているとき、最初は、他の人の意見は耳に入りませんでしたが、自分の声を深く聴いてもらったら、一気に前向きになり、気持ちがガラリと変わりました。そうしてやっと対話をしようと言う気になった。1mmかもしれないが、これが、組織が動いたと感じた。
◎部下役だったが、自分の発言が上司役の怒りをかっているのではないかと心配になり、ファシリテーターになんとかしてほしいと正直思った。「ファシリテーター任せ」な意識があったのかもしれない。
◎役職が低く、場に関し「自分ではどうしようもない」と思っていたが、他の人から、見えていた自分の存在感を聞くと、組織におけるどんな立場からでも変化は起こせると気づいた。
これらの感想をきっかけに、進化ってどういう時に起きるのか?について語られていきました。
◎一般的には、回避しがちな感情の対立や暗黙の了解にしていたような真実について向き合っていくことが必要で、それ は、ある意味その組織の当たり前や正しさが壊れていく瞬間でもあるかもしれません。
◎変化の瞬間は、いろんなところに転がっていて、ファシリテーターだけではなく、どのような立場や役職からでも、その場に影響を与えることができるということ。
さらに、日常のファシリテーションに紐付けた感想では、下記のようなさまざまな学びが聞こえてきました。
◎普段現場で向き合っている相手側の役の感覚が味わえた。もしかすると自分の関係する組織内の人たちが抱いている感情・背景も似ているかもしれない。
◎振り返りで他の人からフィードバックをもらうことで、自分のちょっとした所作がいかに場に影響を与えているかに気づいた。
◎オブザーバー役になったことで、普段は目がいかなかった、リアクションを通じた心の動きや場の動きが見えてきて面白かった。
■生まれた問い:ファシリテーターが追う「責任」と「正解」とは?
もう一つ、振り返りの中で話題となったのは、「この場は上手くいったんだろうか?」という問いでした。そこには、ファシリテーターとして役割があるからにはその責任を果たすべきという思いや、組織という複雑な存在に対して感じる「正解ない難しさ」が現れているようでした。Day2ではこれらの問いを深め、そうした現状の思い込みを手放し、誰もが組織進化に貢献していくにはどうすれば良いのかを考えていきます。
Direction 丹羽 妙(弊社コンサルタント)
Writing 林 美夢(ライター)