【第3期参加】人の感情を扱う「人材」の仕事に不可欠な、立ち戻る場所を得た

2023年6月より4ヶ月間にわたり「今ここから始まる組織進化の実践講座」<第3期>を開催しました。合宿形式による入門講座、さらにオンライン形式で学ぶ本講座を通じて得た学びの変遷について、お話を伺いました。

国分グループ本社株式会社

経営統括本部 仕事における幸福度担当

佐藤 哲也

営業、マーケティング、2年間の出向を経て、経営統括本部へ

──佐藤さんの現在のお仕事について、教えてください。

現在の配属部署は「経営統括本部 仕事における幸福度担当」。巷で言う「ウェルビーイング推進」という言葉に置き換わるのかなと思うのですが、従業員が働く中で「仕事をして幸せだなと思えるような、ポジティブな感情が内側から出るためにはどんなことが必要だろう、どんな支援が必要だろう」と考え、実践するチームに参加しています。

「仕事における幸福度向上」が掲げられた背景には、5年ごとに取り組んでいる長期経営計画があります。2021年から25年までを第11次長期経営計画として進めており、現在はちょうど中間折り返し地点。計画には「4つの価値創造目標」が掲げられ、その中の1つに「仕事における幸福度」が据えられています。事業領域での取組みと同じぐらい大事なことと位置づけているんですね。

──会社は利益が出なければ存続が難しくなります。それと同じぐらい、働いている人が、幸せに働けることが大切だと気づけるのは、結構すごいことだと感じました。いわゆる「ロマンとそろばん」のどちらも大切だという考え方ですね。これは元々御社に根付いていた考え方だったのでしょうか?

そうですね。第11次長期経営計画を決める前に、SDGsステートメントを策定していました。その中に「全ての世界の人を、食を通じて笑顔にします」という言葉があって、策定メンバーがそれを受けて「周りの人を笑顔にするならば、まずは自分たちからだよね」と。

そこから「自分たちが笑顔になるって何だろう」と考えを深めていきました。要は従業員満足だけではなく、その先の概念について中身を作り上げていったんです。

策定の過程で、そもそも弊社のオーナーである「國分家」の考え方に行き着くんですよね。国分グループは、300年以上にわたって國分家がオーナーを勤めています。國分家は「全ての人に役立つ準備をする」という考え方を大切にしていて、会長も言っているんですよね。

「良いことをしていますよ」と一生懸命言うのではなく、縁の下の力持ちとして、人の役に立とうという意味です。その延長線上で、従業員は会社を大切にし、会社は社員を大切にする人事理念があります。300年前から、國分家は働く幸福度を考えていたと感じます。

──佐藤さんはいつから幸福度推進チームに参加されているのですか?

2023年6月からです。その前は営業やマーケティングを担当していました。キャリアとしては営業畑が長かったです。例えば「数字はどうなんだ」「こうやれ」と言われてきたし、言ってきた側でした。

ところが、この経営統括本部に異動する前に2年間、出資企業に出向。そこが中小企業の経営支援をする会社でした。

出向中に、物を売る・作る以外に「売る人/作る人をどう捉えるか」を考えるようになりました。経営者の視点で「経営」を広く捉えた時、中小企業の多くは「損得なく会社を支えている人」によって成り立っていると感じたんです。

そのときに「経営って面白いな」と思って。その思いが残っている中で出向が終わり「これからどうしたい?」と言われて、「経営に興味があります」と伝えました。それで、人の感情を扱う領域にポンとアサインされたみたいな流れですね。

──「仕事における幸福度担当」にジョインする前、出向先で経営に興味を持った際に、印象に残ったエピソードはありましたか?

島根の出雲にある、30人ぐらいの会社とのやり取りですね。ふりかけを製造している会社なのですが、前のオーナーの人間性に惚れて入社した工場長がいたんです。会社がM&Aをしたため、私が出会った時にはオーナーはすでにいませんでした。工場長との雑談で、そうした経緯で会社に入り「今も思いを持って働いている」とお聞きしました。

それは、すごいことだと思ったんです。地元で生まれ、地元に根付き、地元の人間に惚れている。家族もそこで養っている。本当にすごいと思う一方で、工場長は悲壮感を持って働いていたんですよね。「俺がやらなきゃ」みたいな。朝から晩まで「俺がやらないと、この会社回らない」と言っていました。

そういうのが美しいと思う一方で、やっぱり負の側面もある。他の従業員は工場長のようには働けないのではないかと感じました。例えば同じように働くと、一般職の方は残業代がかさみます。話を聞くうちに、工場長が引っ張っている働き方では非効率だとの側面も見えたんですよね。

しかしそこで「工場長の働き方、おかしいぜ」と言うと、うまくいかなくなってしまいます。どうしたら腹落ちして、素晴らしいマインドを残しながら、数字的にも良くなっていくのか。そんな話を、結構したんですよ。すると徐々に彼も変わっていきました。

この過程を経験して、数字を見るだけでもダメだし、感情面だけ見てもダメだと分かりました。両方を行き来しながら、会社の形を作って行くことがすごく面白かったですね。工場長との対話を通して、「感情の裏付けに数字があって、数字の上には感情がある」のではないかと思いました。そして、それが経営なのではないかと思えたことが、一番良いなと思った瞬間です。

会社が変わっていく手前で、私の出向が終わってしまいましたが、この後どうなっていくのか気になりました。上が変わると、雰囲気も変わることが垣間見え、「社長って面白いのかな。人の仕事って何だろう…経営だよな」と興味を持つようになりました。

分からないまま飛び込んだ講座。必死に考えながら走り続けた

──現在の部署に異動し、今のチームに参加すると分かった時はどう思われましたか?

今の上長は、組織進化の実践講座2期生でもあるんです。「幸福、幸福」と言っているのは、分かっていたんですよ。会社が何を言っているのかは分かっている程度の認識で、実際に何を追いかけているのかはよく分からないまま、パッて辞令を渡されたような印象を持ちました。そのため最初は何の仕事をするのか、全然イメージできませんでした。

第一印象は、宗教のような壮大な話かと思ったんですよね。幸せになりましょう、みたいな。でも会社として本当にやりたいことは、「幸せになれ」と言うのではなくて、“詰め将棋”なんです。幸せの手前まで詰め将棋をしていくイメージです。こういう取り組みが重なれば、結果として「なんか幸せだよね?」と感じる人が現れる、そんな仕事だと思っています。

そういうシチュエーションに文句を言う人は、いないと思うんですよ。「楽しく働こうぜ」と言って、100人中90人ぐらいは「そうありたい」と思うのではないでしょうか。自分から「楽しいです」と言える環境を作ろうとしている仕事だと言うことが、チームに参加した3〜4ヶ月目ぐらいから分かってきました。そこに役員を置き、人材を置き、お金をかけてやっている。なんて贅沢な部署だろうと感じますよね。その輪の中に入れることが、貴重な経験だと思いますし、誰にでもできるわけではないと考えるようになりました。

──当講座を受けることになったきっかけは何ですか?

まず2023年6月1日付の辞令で、ゴールデンウィーク明けに異動の知らせを受け取ったんですね。内示をもらって、上長に挨拶した時に「6月2日・3日、これがあるから行ってみない?」と提案されました。1日が金曜で、2日・3日が土日でした。

着任して何をするかも、分かっていない。仕事の中身の説明も受けてない状態で、まず入門講座が開催された逗子に行きました。「これ、なんだ?」と思いながらも、深く考える余地がなかったのが正直なところです。考えるまもなく、その場があって参加しました。

──実際に受けてみてどのような印象を持ちましたか?

「なんだろう、これは」ですね、正直。何を言っているかも、よく分かりませんでした。ただ、入門講座を通じて「これからは人の感情を扱うのか」と認識はできました。人の関係を扱う仕事を、これからするんだなと感じながら帰りましたね。講座を受ける意味というか、野間上長が「行ってみる?」と提案した意図は、「人を扱う仕事」だと意識させたかったのかと受け取りました。

──では入門から本講座に進むにつれて、少しずつ理解度が深まっていったのでしょうか?

少しずつ深まってはいきましたが、講座の期間中は、3時間のプログラムに必死でした。出席のたびに何かつかんだという感覚は、走ってる最中はあまりなかったんですよね。「今回は何を問われているんだろう?」と考えながら走っていました。

講座が終わり、そこから別の本を読んだり、外部の会社さんからいろいろなお話を聞いているうちに「これ、講座でやったことがある」と気づくようになりました。

10月に講座を終えて、11月〜12月で「あ、これ習った!」と感じた瞬間が何回かあったんですよ。その都度、動画を見ながら復習しました。

講座での学びを社内で一つひとつ繋げ、種まきをしていく

──講座を終えて改めて動画を見て振り返り、気づいた変化はありましたか?

ToBeingsコンサルタントの児玉さんにお願いして「1on1研修」を実施したいと声をかけ、社内で稟議書を書いて説明したんです。その際に、学んだことが整理できたような気がしました。

上長が「プロセスワークをやりたい」と、ずっと言っていたんですよね。私が着任した時は「プロセスワークって何?」と思っていましたし、「なかなか導入に踏み切れない」と悔しそうな顔をする、その表情の意味もよく分かっていませんでした。ところが講座を終えて「プロセスワークってこういうことだったのか」と理解しました。

自分なりに翌年に向けて何がしたいのか、種まきをしようと考えていた時でもありました。「プロセスワークの意味は分かった。上長が難しいと悩む背景も理解できる。社内の事業部のコンディションも把握している。だからこそ1on1を始めてみませんか」と言えたときに、講座の流れを少し理解したように思えました。

弊社は自己内省のフェーズはけっこう進んでいるんですよ。すでに従業員の半数近くが自分のパーパスを定めるワークショップをやっており、約5,000人中2,200人が受講しています。そういう経験を経て、次は何だろうと考えると「1対1の対話だよな」と感じました。講座の資料や動画を改めて見返し、これだと思ったことが繋がったんです。プロセスワークを一気に導入するのは難しい。それでも導入に向けて一つずつ組み立てながら進めていけるから、講座を受けて良かったと思いました。

──講座で学んだことを、少しずつ形にしているというか、繋がっているのですね。

そう、繋がってきました。ともすれば、今「1on1」は、はやり言葉。バズワードですよね。バズワードだからやるんだろうと言われても、全部言い返せます。「こういうことをやっているから、今これが必要だ。来年じゃないし5年後でもないし、なんなら去年でもないし今なんだ」と言えるのは講座のおかげかなと思います。

講座には再受講しているリピーターもいます。最初は「どうして2回も受けているんだろう?」と不思議に思いましたが、その意味が、今ならちょっと分かります。

ネガティブな反応はポジティブな反応に達するまでの通り道

──佐藤さんは人材領域に加えて営業、マーケティングも経験されています。この先、こういう分野を学んでみたいなど、何か目標はありますか?

実は、将来についてとても迷っているところです。上長にも、そういう悩みは包み隠さず話すようにしていますね。

普通はなかなか言えないと思いますが、上長自身も講座の修了生。悩みをぶつけてみても、受け止めてくれました。

やっぱり商品に触れたいですし、食べ物が好きでこの会社に入りましたからね。営業から異動した後もずっと、電卓を持ち歩いていたんです。でもこの1月からカバンの中に入れるのをやめたんですよ、使わないから。それでも半年は持っていたんですよね、未練がましく。お守りみたいな感じです。電卓を持ってないと不安だったのに、それを捨てたということは、ちょっと自分の心境が変わったのかもしれない。

先を見ると迷うのであれば、今、目の前に転がっていることだけを見たい。それが今の心境です。今のところは、その道は会社の外ではなく、会社の中にあると思っています。

ちょっと抽象的ですが「経営に興味がある」と言いながらも、社長を見ていると、自分にはできないなと思うんです。

やっぱり彼らは理論じゃ説明できないひらめきや、一見、非合理な努力を平気でする人たちだと思います。自分はそこで振り切れない。以前、出向した企業では子会社が20社ぐらいあり、社長が20人いたわけです。彼らを見てもそう思いましたし、私の年次だと、友人が経営者として10年やっていたりする。彼らと話していると、私にはできないなって。なんか振り切れないと感じたんですよ。

では、それでも経営に携わるには何だろうと考えると、参謀ですよね。右腕です。そのために学びたいことはいろいろありますが、事業面・財務面でバランスを取ってアドバイスしてみたいですね。大きい会社は役割分担でCxOのようになっているでしょうけど、全部やってみたいなと思っています。

一応過去には営業もやっていましたし、今は人材領域もやり始めています。誰かに相談する際には、その人が何をやっていたのか、背景を見て相談しますよね。やったことない人には相談しない。「佐藤は経営も、人もわかるよね」となればピースが埋まってくる。ひょっとしたら、次は会計の知識が必要かもしれないですよね。参謀としてカバーできるかもしれないと思うと、ちょっと面白いかもなと。そのためには、結構、勉強しなければいけないので大変ですけれどね。

──この講座はどのような方に向いていると思いますか?

一生懸命になりすぎてしまう人、でしょうか。この講座を受けてみて、人の感情を構造で捉えられるようになりました。目の前でネガティブな反応をされても怖くなくなってきたんですよね。

ネガティブな反応の先に、やり方次第ではポジティブな感情が待っている。そんなエッセンスが講座の中にあったような気がしているんですよ。ファシリテートする中で、やはり壊れていってしまう場面もありますよね。その裏には「別にあんたが好き・嫌いでやっているわけじゃないよ」という気持ちが隠れている。それを知ってから、人を相手にするのが怖くなくなりました。

一方で恐れを抱いている人の一挙手一投足に、過敏に反応する人はたくさんいます。「あの人がこう言ったらまずいかな」とか、会議が終わった後に「あの発言はまずかったかな」「一生懸命になりすぎて部下に嫌われたらどうしよう」とか、頑張っている人ほどそういう反応を気にしてしまうと思っているんですよね。

そういう人にこの講座を受けてもらえれば、ネガティブな反応はポジティブな反応に行くまでの通り道なんだと捉えられるようになる。ストレスが軽減されるというか、本来の力を発揮できるのではないかと思います。

自分自身もそう感じたんですよね。この領域は答えがないので、会議が紛糾します。部署が違う人を集めると、何を言っているのかが分からない会議になるんですよ。そういうのが怖くなくなりました。

以前は私もこの場にふさわしくない結論であっても、解決策を出さなきゃと無理やり締めていたと思うんですよ。最近、そういうのはやめています。雰囲気は悪くなりますし、「あいつ、なんなんだよ」という顔をされても、次でまとまると思えばね。ちょっと内心は焦りますけどね。いろいろ考えますけど、止まれるようになりました。このメンバーなら最後、しらけた雰囲気になったとしても、その場にもう少しいようと考えられるようになった。そうするとストレスも軽減されます。少しずつ、講座での学びが血肉になってきましたね。

──最後に、講座を受けてみて感じたことをお聞かせください。

今感じているのは、立ち戻る場所かな。人材領域という、当然、仕事としてやったことがない状態で取り組む際に、立ち戻る場所がないと、多分流行っているものをどんどん掴むだけになるんですよね。売れているものを掴みにいくだけになるんです。

買い叩かれたもの、擦られまくったものを掴みに行って、結局出来上がるのは深みのない知識。流行り言葉は言えるけどその意味は分かっていない状態になってしまう。でも、あの講座を受けたことで「戻れる場所」ができました。そういう講座なんじゃないかと思っています。

実はそういう体験をしたことが以前にもあります。営業から商品開発に異動し、物を売るところから“作る”ことになり、マーケティングの知識が必要になったんです。そのときの上長も、外部研修に突然送り出してくれました。外部のマーケティング講座上級編を、3ヶ月受講しましたね。

ハードでしたが、「美味しいからいいじゃん」「安いからいいじゃん」ではないのだと学びました。その後も、この商品を出すべきなのか、どう売るべきなのかを迷った時、いつもその講座を思い出していました。

立ち戻れる場所って、やっぱり必要なんです。「このフレームに入れれば、売れるものが作れる」という方程式ではなく、「なぜこの商品だったのか」を辿るために学問があるんですよね。

この記事を書いた人