導入事例:菱電商事株式会社様
「ソリューションビジネス」への戦略シフトを現場営業起点で行うプロジェクト
ビジネス環境の変化が激しい中、三菱電機の代理店ビジネスから、顧客課題を解決するソリュ ーションビジネスに舵を切った菱電商事は、その戦略を実行に移す施策として、研修の枠を超えた実践の場と位置づけたとして「ソリューションビジネス推進プログラム」を行いました。
本インタビュ ーは、プロジェクトのオーナーであった冒頭写真の天田常務(人事部)、
中村事業部長・東統括部長(事業本部)へのインタビュ ーを行うとともに、プロジェクト実施の責任者である藤吉部長(事業本部)と板垣課長(人事部)にそれぞれお話をお伺い、その結果をまとめたものです。
「モノ売りビジネス」から「ソリューションビジネス」へシフト
御社の業務や概要
天田常務:
弊社は、 三菱電機グループ国内最大手の技術商社として、 国内外のメ ーカーや工場をお客様としており、FAシステム、冷熱システム、 電子デバイス等の販売を行っています。 三菱電機グループの一員ではありますが、扱う商材は三菱電機 のものだけに留まりません。 パートナーも2,000社を超えています。
「ソリュ ーションビジネス推進プログラム」の実施にいたった背景
中村事業部長:
一言で言うと、「モノ売りビジネス」から 「ソリュ ーションビジネス」へのシフトです。 近年は、 顧客の抱える課題やニーズが多様化し、また価格競争も激化するなかで、 単にいい商品であれば売れる時代ではなくなってまいりました。 事業環境の変化が激しい今こそ、 本格的にグローバル企業への転換を固る 「第二の創業期」と捉え、 大きく会社の舵を切りました。つまり、 顧客よリベストパートナーと呼ばれるにふさわしい高付加価値を提供する商社へ 進化するため、 顧客に密着した課題解決を行うソリューション提供力の強化を図り、 「グローバル ・ ソリューション ・プロバイダー」として、 利益ある成長戦略を推進しようとしているのです。
「ソリューションビジネス推進プログラム」は最重要の人事戦略
ー 「ソリュ ーションビジネス推進プログラム」の位置づけや概要を教えて下さい。
天田常務:
弊社が 「第二の創業期」と呼ぶソリュ ーションビジネスヘのシフトを具体的に実現しようとする、今回の 「ソリュ ーショ
ンビジネス推進プログラム」は、戦略的な位置づけとしても、全国の事業所全てを対象にするという規模感においても、その重要度・影響度は非常に大きく、 弊社の人事戦略における最重要の施策です。
中村事業部長:
内容としては、 人事部と本部が連携し、 全国のリーダー層の営業が起点になって、 実際に顧客を訪問・開拓しながら、ソリュ ーションビジネスを立ち上げるプログラムです。 単なる座学とは全く異なり、 研修で学んだ内容を武器に実際の顧客を訪問し、 講師のフォローをもらいながら、 「研修ではなく、 業務である」というスタンスで顧客の課題解決を行う、1年間のプログラムです。
ー 「ソリュ ーションビジネス推進プログラム」の具体的な内容を教えて下さい。
板垣課長:
「 ノリュ ーションビジネス推進プログラム」 は、 全国の若手~中堅の営業担当者150名近くを対象に、 東16グループ・西12グループに分けています。 所厩部門や所属地域もバラバラなグループを組みました。 そこで、1年間、 東西それぞれ6回の集合研修・報告会を行い、 その会の間での現場実践を行います。 どのようなソリュ ーションビジネスが構築できるのかの仮説を立てて、 その仮説を検証すべく既存顧客や新規の顧客を開拓し、 その顧客の課題を深く聞いた上で、 顧客の課題を解決すべくソリュ ーションを提案・受注していく流れがポイントです。
集合研修では、 ビジネスモデルの仮説構築の手法や、 顧客の信頼を獲得し課題を深く聴くための手法など、 実践的な手法を教えていただきます。 当たり前ですが、 いきなり新規の顧客に 「課題を教えて下さい」と聞いても、 信頼関係上もスキル上も聞けるわけではありません。 いかに初回の訪問から 「モノ売り」ではなく、 「自社の課題を相談するパートナー」と認識してもらえるかが鍵で、 そのコツやヒントを徹底伝授してもらいながら、 営業担当者が自分のも
のになるまで伴走してもらいます。
現場実践では、 各グループで訪問先にアポを取り、 商談を進めてまいリます。 ところが、 現場実践を続けていくと、必ず壁にぶつかります。 これは 「思うように顧客が課題を相談してくれない」、 「課題を聞くことはできたものの、 お金を払っても解決するほど切実ではなかった」、 など多岐にわたります。 こうした壁への助言を、 SFAや集合研修で行います。
「一方通行」ではなく、実際に成果に繋がる実践的プログラム
ープログラムを実施しての率直な感想は?
天田常務:総合評価として非常に良かったと思っています。戦略的重要度がとても高いプログラムでありながら、具体的な成果に繋がったことに、とても満足しています。
具体的に良かった点は 「一方通行」ではなかった、ということです。普通は、私たち発注側が言った要件やキー ワ ー ドに、ベンダーさんは「はい、分かりました。」となりがちですが、To Beingsさんは、弊社の課題はもちろん、一つ一つの言葉まで深く理解していただき、「こうしたら良いのでは?」といった提案・ディスカッションを重ねながら進めてもらいました。その過程で、事業本部も研修ではなく現実の営業を変えるプログラムだと思い本気になってくれたのが大きい。さらに、それは提案段階だけではなく、プログラム期間中もずっと続いていました。
例えば、「ソリュ ーション」という言葉ひとつとっても、三菱電機の言うソリュ ーションと、菱電商事の言うソリュ ーションは全く意味が違う。そういう言葉の意味や背景を深く理解してくれたことが非常に助かりました。
東統括部長:
1年間やってみての感想は、 会社として「ソリュ ーションビジネス」に舵を切りましたが、 現場は「ソリュ ーションとは何か?」「なぜ必要なのか?」 といった戦略の浸透もまだまだの段階で、 明確 なイメ ージを持てていなかったと思います。 それが現場の最前線にいるこのプログラムの参加者にしっかリ浸透し、 さらに幾つかの新しいソリュ ーション案件が成立し、 何より最終発表会に参加してみて、 ひとりひとりの ‘‘ソリュ ーション筋肉’ が身について来たことが明確に伝わってきたのが良かったですね。
藤吉部長:
この1年間の活動を総括してみると、 どのよう なお客さんにどん なソリュ ーションを提案すればよいか、 という 幾つかのパタ ーンが見えてきました。 また、 ある部門が当初想定しているよりも成果を上げているといったことや、 一見目立っていない社員でも実は潜在的な力を持っているといったことなども、 明確に把握できるようになリました。 つまり、 現場のリアリティが細かく見えるようになってきたのです。 これは大きな収穫でした。
受講生に大きな変化が。そして現場からも手応えが。
ー現場や受講生の観点での成果は?
板垣課長:
今回のプログラムは、 通常の研修とは全く違うものでした。 戦略に基いて現場を動かさなければならないため、 私たち人事部、 弊社の事業本部、 そしてToBeingsさんの3者が一体のチームとして結束しなければなりませんでしたが、早い段階でチームになれたことが幸いしました。
ただ、 開始当初は、 上手くいくかどうかハラハラしていました。 プログラムに参加する弊社の営業担当者は、 ソリュ ーションビジネスの経験だけではなく部門を超えた連携の経験なども未知数で、 所属部門・所属地域もバラバラ、 そんな彼らが日常業務を回しながら、 ソリュ ーションビジネスを立ち上げるのですから、 相当なチャレンジであることは間違いなく、 彼らが今回のプログラムに、 上手く適応できるのかどうかとても心配でした。
ところが、 キックオフが終わった後、 数人のマネージャーから「いい内容だな」という普段言わないコメントが貰え、海外営業を担当するマネージャーからは 「海外の現地でもやってくれないか?」とまで言われ、 早くも手応えを感じましたね。
一方、受講生は当初、少し不安な様子でした。実際に前人未到の取り組みをするのですから当たり前ですよね。 ソリュ ーションビジネスは、 頑張って活動すれば結果が見える普段の営業活動とは全く違います。 手間もかかるし、 正解も前例も無いので自分の頭で考えなくちゃならない。 意外にも不満の声はあがりませんでしたが、 こうした仕事は、 できれば避けたいと思うタイプの営業担当者が、 一定数いたようでした。 ところが、 プログラム開始後、 3ヶ月から半年くらいかけてだんだん受講生に変化が見え始めて、 手応えを感じてきました。
一受講生のスキルに関して、 どんな変化がありました?
藤吉部長:
弊社は元々既存の顧客が中心なので、 いま前線にいる世代にとっては “ ド新規 ’’の開拓の経験などはあまりなく、 ソ
リュ ーションビジネスが必要だと頭で分かったとしても、 身体が動かなかったと思います。 特に、 新規顧客の課題を聞こうと思ったら、 ToBeingsさんが言ってくれたように、 「課題の専門家」と認識してもらえるための様々な事前の工夫が必要で、 そうでなければそもそも会えないし、 会えたとしても「売り込み」と思われてしまう。
そんな難しい状況の中、 ToBeingsさんに伴走してもらって、 アドバイスや「武器」をもらいながら、実際に動き始め、次第に顧客と課題について議論できるようになり、 さらには具体的な成果を出す社員も出てきました。 ソリュ ーションに戦略的に舵をきっても会社全体の動きを変えるのは非常に難しいことです。 しかし、 今回上から順に変えるので はなく、 会社の最前線から一足飛びに変わってきたのは非常に大きく、 今後会社全体を動かす原動力になるのでは、と期待しています。
ーチームやリーダーシップの観点ではいかがでしょう?
板垣課長:半年ほどで、受講生からの報告会の様子が大きく変わってきました。プレゼン資料をもとに各チームが発表する際、当初はチームの中心的な1,2名しか対応できませんでした。しかし、途中から発表担当者が出席できない場合でも、チームの他のメンバーがたいおうできるようになってきました。つまり、次第にそこあげされてきたといえます。
あるとき、 報告会が終わってから、 会場に遅くまで残って打ち合わせをしているチームがありました。 これまでは年次や部門も違い、 リーダーもメンバーも遠慮しあっている感じがあったのが、 かなリ率直に本音をぶつけあっていま した。 もともと和気あいあいした社風の弊社で、 互いに遠慮がちな所もありますが、 それだけ本気になったり、 一人ひとりの自覚が出てきたのは大きな変化だと思いました。
数年来の最重要の経営課題が、遂に現場に浸透して動き始めた。
ー戦略の実現という観点では?
板垣課長:
ノリュ ーションビジネスの重要性は、 本プログラム開始前から、 社長を筆頭に “ど真ん中" の経営課題として色々な方法で浸透を図ろうとしていましたが、 なかなか現場が動き出すのは簡単ではありませんでした。 一方で経営からの 戦略浸透の要請も日々強くなっていくのを感じていました。
そんな中で、 事業本部とタッグを組んで、 研修という形を借りて現場実践を進め、 実際に現場が動き出すのをみて、私としては非常に感慨深く思っております。 そもそも最初は動き出す以前に、 「ソリュ ーションとは何か」ということ の理解もバラバラで、 ToBeingsさんが整理して説明してくれたソリュ ーションビジネスを4X4のマトリックスで区分した表で言う所の ‘‘ ド新規’’だと思って、 全く動けていない人もいました。 その頃と比較すると、 「ソリュ ーションビジネスとは何か」というのは相当浸透したと思います。
更に、 ToBeingsさんがネー ミングしてくれた ‘‘ソリュ ーション筋肉' も、 その後10個に細分化して頂き、 どんな筋肉 がどのようについたのかも見えるようになり、 ソリュ ーション筋肉というスキルも浸透してきたと感じます。
そういう意味で、 人事部として、 戦略が浸透し現場が動くということに寄与できた喜びはとても大きいです。
さらに、 戦略を立案したり修正したりする上での、 現場のリアルな情報が把握できました。 つまリ、 現場の営業の実力がどれくらいのレベルか、 また、 彼らは戦略的な大方針に対して、 本音ではどう思っているのか、 といったリアルな状況が具体的に把握できるようになりました。
一方で、 どういう特性の社員が、 このような会社のイノベーションの取り組みを楽しみ、 活躍するのかも見えてきました。 これは必ずしも既存のビジネスで活躍している人ではないので興味深かったです。 このようなリアリティを把握すればするほど、 絵に描いた餅にならない対策を練ることができます。
ソリューションビジネスを体現。そして、抜群の対応力が魅力。
-ToBeingsの特徴や選ぶ理由は?
天田常務:
まず、先ほども言いましたが、最初にお会いした時に、弊社の課題を徹底的に聞いて理解しようとしてくださっ た。 そのうえで、提示して頂いた、パワーポイントの1枚のコンセプトチャ ートが、弊社がやろうとしていることに、‘‘ドンピシャ ’’でマッチしていたのです。 そして同時に、弊社がやろうとしているソリュ ーションビジネススタイルを、ToBeingsさんがまさに体現されていたというのもポイントでした。
板垣課長:
元々、ToBeingsさんには、弊社の総合職向けの階層別研修をお願いしていました。
その時から、他の研修会社とは違い、私の考えていることを細かく聞いて下さり、昨年と同じことを提案してくることはなかっ たですね。ただ、今回ここまで弊社の課題を聞き出し、弊社と一体となっ て考えてく れるとは思っ ていませんでした。
ー一年間を通したお付き合いの中で、ToBeingsの特徴や良かった点は何だと思いますか?
藤吉部長:
他の研修会社もコンサル会社も、 あるべき姿を押しつけてくる感があります。 それは言っていることは正しいですが、 それでは現場は動きません。 それに対し、 ToBeingsさんは、 「そもそも、 ソリュ ーションビジネスとは何なのか」が、 現場に浸透するように、 その場で相手に合わせて言い方を工夫したり、 キーと成る概念については「にじみだ し領域」や「ソリュ ーション筋肉」といったような、 受講者が理解し やすい比喩やキー ワ ー ドを使い、 全社として共通認識を取れるように してくれました。
また、 特に重要なソリュ ーション筋肉については、 彼らに分かりやすい言葉に噛み砕いて具体的に10個定義してもらいました。 このおかげで、 現場は何をどうすればいいのかがやっと分かってきたという感じがあリますし、 それが文書という形で残った ということも、 重要なアウトプットでした。
沢山の実践をした上で、 振り返りの場で実践からの学びを言語化してもらうことで、 受講生も少しずつ筋肉がついてきました。 最後の飲み会で、 顧客課題の仮説などについて半年前に書いたものと、 いま書いているものを冗談で比較 したんですが、 そのレベルは目に見えて違うものでした。
板垣課長:
プログラムが始まってから感激したのは、 その場に応じてスタイルをどんどん変化出来る、 その対応力です。 これは、 予め決まったプログラムを進めるだけの他の研修会社さんにはありません。
早い場合、 1日研修なら午前中の様子を見て、 その後、 休憩時間を使って私と問題点などを協議して、 それを当日の 午後の研修にすぐ反映しています。 内容をより良いものへと変えるのが早いんですね。 受講生や場の状況をみてポイントを掴む力と、 そこに対して何をすれば効果的かを考えて的確に内容を変える、 というここまでの対応力は、 他の 会社には絶対ないです。
藤吉部長
東のグループで研修したときに、 ある現場の課題が見えてきたとします。 でも、 次に西のグループで研修した時にそ の解決法を出してくれる。 このように、 研修の場での受講生の理解や反応を丁寧に見ながら、 戦略が実行されない受講生や現場の課題やボトルネックを把握し、 次の回までにがらっと改善してきてしまう。 うちも答えがわからないし、 現場もわかんないし、 という中でプログラムを一緒にやっていくうえでの安心感が違いました。
藤吉部長
東のグループで研修したときに、 ある現場の課題が見えてきたとします。 でも、 次に西のグループで研修した時にそ の解決法を出してくれる。 このように、 研修の場での受講生の理解や反応を丁寧に見ながら、 戦略が実行されない受講生や現場の課題やボトルネックを把握し、 次の回までにがらっと改善してきてしまう。 うちも答えがわからないし、 現場もわかんないし、 という中でプログラムを一緒にやっていくうえでの安心感が違いました。
ー 最後に、ToBeingsへのメッセージをお願いします
ToBeingsさんは、 「良い研修」を創ろうという発想はない。 常に「現場をどう良くしようか」を考え抜いてくれてい
る会社ですよね。
従って、 極端に言えば、 この価値をわかってくださるお客さんとだけ付き合うので良いと思います。研修を行事としてこなしたり、 研修会社さんに任せきりにするのではなく、 現場を動かすべく、 人事や現場とのタイアップをして、
一緒になって考えるような会社と、 本当にいい仕事ができるのだろうなと思います。
近年、戦略人事などがキー ワ ー ドになっていますが、そういった ‘‘上っ面’ の言葉ではなく、戦略を実現することにコミットしている。 このスタイルをいつまでも続けて欲しいと思っています。