「シスコのようなグローバル企業のマネジメントともしっかりと話ができて、それと同時にワークショップや打ち合わせでは社員の目線に立ってファシリテーションをしてくれる。この2つをやれる人って、ほとんどいないんですよね。」
グローバル企業の人材開発・組織開発について経験豊富なシスコシステムズ 合同会社の土屋恵子氏。急成長するサービス営業部門において、強く個々人の 成果が求められる中、チームとして一体感や共有ビジョンを持つことを目的と した、初のチームビルディングワークショップを ToBeings と共にどのように創 り上げていったのかを詳しくお伺いしました。
ワークショップを実施してみて
- シスコの業態と、サービス部門 (CAチーム) の役割について教えてください
シスコはインターネットや企業内ネットワークで利用される、ルータやスイッチなどの製造・販売が主な業 務で、世界のネットワーキング業界におけるリーディングカンパニーのひとつです。CA(Customer Advocacy) 部門は主に、ネットワークに関わるサービスの販売・提供を担当しています。
̶ ワークショップ実施の背景は?
サービス部門はこれまで、非常にチャレンジングな目標を掲げ、ここ数年で急激な成長を果たしていました。 それは良いことなんですが、既に一人ひとりの頑張りだけで目標を達成することに限界が来ていましたし、 チームとしても全員がその成長スピードについていける訳でもなく、パンツの紐が伸びきったような状態に なっており、改めてチームとして一緒にやって行くんだ!という土壌作りが求められていました。
̶ どの様なワークショップをお探しでしたか?
簡単に言うとチームビルディングなんですが、単なる表面的なチームビルディングではありません。本当に 深いところで自分たちが話し合い、自分らしさを出し合う過程で、深いレベルで繋がりあうような、そういう チームビルディングができたら良いなと思っていました。
̶ ワークショップを実施してみての率直な印象を教えてください
良い意味で想定外の化学反応が起きたなと感じました。ワークショップを実施す るにあたり、ワークショップを設計するコアチームを作ったのですが、最初は、何 で俺たちが集められたんだ?という雰囲気がありました。しかし、だんだんとこの プロジェクトに本気になり、橋本さんたちの手を離れて自己組織化し始めました。
そのため日々、すごい勢いで設計や準備のメールが飛び交いました。直前になる と、ゴールデンウィークの休みを使って芸術的なワークショップの招待状を作る人が出たりもしました。当日の朝も、営業の彼らが率先して雑巾がけをしていたのは、信じられない光景でした。
ワークショップ自体も、自分達の多様性や可能性を探求する会話をしあったこと で、「CA らしさ」を身体で味わい共有することができましたし、最後にはあるマネー ジャーから、「シスコで 12 年間働いてきた中で、最も最高の時間だった」という言 葉が出る程でした。
深いレベルで繋がるチームビルディングとは?
̶ 改めて、どんなチームビルディングを考えていたのでしょう?
チームビルディングというと、ゲームをしたり、クッキングイベントをしたりといったレクリエーションを 中心に添えて、関係性を深めたり学びを得るものが多くあります。ただ、今回求めていたのは、それよりもっ と深いレベルでのつながりです。
というのも、たとえその場でチームワークが高まったとして も、仕事に戻ると次第に元のイメージに戻ってしまうことが よくあります。そうならないためには、自分や相手を深いレベ ルで知り、CA というチームが本来持っている素晴らしさを新 たに発見する。そして、その可能性を最大限生かし、皆でどん なビジョンを生み出したいかを、自分のこととしてコミット してゆくことが重要です。それを実現させるために ToBeings さんと一緒に創り上げたのが、「あなたを発見する会話」と呼 んだ一連の対話のプロセスでした。
̶ その対話のプロセスにおいて、気をつけたことは何ですか?
「大人の遊び」です。
もともと遊びの要素は重視していたのですが、普通のレクリエーションでは単なる遊びで終わってしまいま す。そうではなくて、”なぜ、大人が業務時間を割いて遊ぶことが必要なのか ?”を明確にしていく過程で出て きたのが「大人の遊び」というコンセプトでした。
つまり、チーム本来の素晴らしさから新しい共有ビジョンを描こうとしても、今までの思考パターンが邪魔 をして発想をジャンプさせることは難しい。従って、参加者にはそのジャンプを成し遂げるために、「大人の 遊び」をするんだということを、理解してもらいました。
具体的なアイデアとして出てきたのが、即興役者に入ってもらって、頭でなく身体や感情を使って探求する ワークや、CA チームの未来をアートで表現するといった右脳を使ったワークなど。最終的に、参加された人 に、とても印象に残る結果となったようです。
なぜ、コアチームが自発的に動き出したのか?
̶ コアチームについて、もっと教えていただけますか?
今回のワークショップの詳細な設計では、コアチームと呼ばれる現場の人々と、事務局からなるチームを形成し、ToBeingsさんにその運営をファシリテートしてもらいました。
メンバーは「マイクロコズモ」といって組織の縮図となるような人選を意識し、組織の様々な声がワークショップの設計に反映されるようにしたことは、後から考えても、とても大事なポイントでした。
̶ コアチームの動きはいかがでしたか?
もともとコアチームのミーティングは現場も忙しいことから、2回を予定していました。ところが、自然な流れでもっとやろうということになり、1か月の間に4回も実施し、次第にメールのやり取りがすごい勢いで交わされ、かなり深い話もされるようになりました。
そして、ある人がコアチームに入ってからの自分の人生における大きな転換をシェアしたりして、すごい盛り上がりました。それだけ、関係性や気づきが深まっていることを実感しました。
̶ なぜ、コアチームがこれだけ自発的に動き出したのでしょう?
コアチームの運営でとても特徴的だったのは、小さな声やあらゆる立場を大事にするところでした。
通常であれば、ワークショップの目的や設計に沿わないような小さな声や立場は、流されてしまったり、発し にくかったりします。しかし、そうした小さな声を橋本さんが一つ一つ拾って意味づけてくれたおかげで、皆 が小さな声や、様々な立場を本当に大事にするようになったんです。
その後は、意図を持って「放っておき」、「手放す」ようにしました。そうすることで、自発的に自己組織化が始 まってきたんです。
たとえば、予定よりも増えてしまったコアチームミーティングでしたが、皆の業務がとても忙しかったので、 営業で時間のない人のためにこういうカバーをしようとか、逆に営業はその時間帯は出れないけど、必ず メールで夜にアイデアを出してくるとか。こうして、自己組織的にお互いに助け合うチームができたことは、 非常に素晴らしかったです。
また、このワークについて女性はこう感じるとか、入社間もない人はこう感じるとか、小さな声を拾いなが ら、一つ一つ対処していきました。この過程そのものが、既にチームの一体感を高める取り組みであり、当日 の場作りに影響をしたんだと思います。
そして、最後の方には、こんなプロジェクトをやらせてくれる会社は素晴らしいとか、このチームにいて幸せ だっていう声が出てきたことはすごいですし、このチームが動き出した一番の要因を物語ってくれていると 思いました。
まさに、一緒に U の谷 * を下って上がるみたいな事ができたのかなぁ、と思います。
* MIT のオットー・シャーマー博士が提唱した社会変革・組織変革テクノロジーである U 理論のようなプロセス
ワークショップ実施後の変化
̶ コアチームのメンバーや参加者にどの様な変化が起きていますか?
コアチームの一人ひとりは、とても元気にやっています。設計するプロセスを通じて、ここまでやって良いんだという確信が持てたみたいで良かったです。
このワークショップの時に入ってきた新人社員も、とても元気です。自分たちが歓迎されている感触を得ていて、ワークショップ終了後もあの時のパワーが続いている感じですね。
また、今回CAと関連部署が100人近く集まったワークショップでしたが、今でもあの日の参加者とはエレベーターとかですれ違っても必ず、元気?とか、こんにちは!と言葉を交わしますし、あの時にできた信頼感は時が経った今でも続いているなと感じています。
ToBeingsをパートナーとして選んだ理由は?
̶ 改めてなぜ ToBeings と一緒にやってみようと思われたのですか?
このような戦略的なワークショップでは、マネジメントのコミットメントが高くなります。必然的にファシリ テーターは、グローバルカンパニーの日本支社での課題など、マネジメントときちんと話ができることが必要です。
と同時に、今回のような現場の一体感を生み出すワークショップでは、トップダウンでメッセージを発するよ りも、参加した社員の目線に立って、ファシリテーションができることも重要です。 この2つをどちらもやれる人がほとんどいないんですよね。その両方をマネージしてくれる ToBeings さんと 仕事をできたことはすごいラッキーな事だと思います。
̶ ToBeings と一緒にやってみて良かった事は何ですか?
参加したシスコの社員から見ると、一緒にしっかりやらせてもらえた感覚がとてもあります。そのことによっ て社員もすごく成長できたと思います。
社員の小さな声の中に見えるリアリティを常に大事にして、先ずそれを最優先にしながらプロセスを一緒に 創ってきた感じがします。
まずプロセスやプランニングがあって、その通りにやりましょう、ではなく、すごく丁寧に丁寧にその場で起 こっているリアリティをちゃんと受け入れて、反映し続けてくれたことが、私にとってすごい信頼感でした。
̶ 最後に、ToBeings へメッセージをお願いします。
ToBeings の皆さんが外から大事なところを支えてくれてたので、皆が安心して正直にしゃべれたと思います。 一つ一つの小さな声を大切に拾ってくれたから、深い会話ができました。また一緒にやりたいですね。