4ヶ月間にわたって開催された「今ここから始まる組織進化の実践講座」。3期、4期と連続して参加した長瀬さんに、入門講座・本講座を通じて得た学びの変遷について、お話を伺いました。
ポールスター・パートナー株式会社
代表取締役
長瀬 隆
自己理解を深めるために「深淵なる世界」へと深く潜っていった
──普段はどのようなお仕事をされているのですか?
2019年より、組織開発コンサルタントとして、ビジネス・コーチングやビームビルディング、研修などを行っています。
さまざまな組織に伴走しているのですが、この領域に興味を持った原体験は私自身が育った家庭環境にあります。幼い頃、決して良好ではなかった両親の仲を取り持とうと一生懸命だったんですね。その後、社会人になってからも「うまく回っていないチームを何とか変えよう」という正義感でいっぱいで、力技で何とかしようとしていました。
しかし、変えようとしても変わらないんですよ。正義感や焦りでやってみて、一見すると変わったような気がするけれども、何かギスギスしていたり。そうした経験も山ほどありました。
──当講座を2期・4期と2度にわたって受けていますが、なぜ「受講しよう」と思われたのでしょうか?
組織開発、組織進化は本当に奥深いんです。最初の受講前は少しかじった程度だったため、2期を受けて少し概要が分かったように感じました。これだけで組織開発を語るにはおこがましいと思いましたし、まだまだ学び始めだなと。
そうした自戒の意味も込めて、もう一度最初から学び直そうと4期に参加することにしたんです。それでようやく「入門編」に入っていけた感覚がありました。知れば知るほど、この深淵なる世界に入っていくような、そんな感じがしてなりません。
例えば「人の行動」ですね。表面的に出ている行動の裏には、考え方や物事の捉え方が必ずセットになっています。そうした価値観によって、その人の行動パターンや成果が表れてくるのだと知り、新たな発見を得たと思いました。
まさにスキンダイビング(素潜り)と同じで、奥深く潜っていくように探ってみると、新しい発見があるんです。自分の中の“新たな自分”が発見できれば、そこを意識することができます。変なクセがあれば抑え、良い部分があれば活かそう。そんな使い方ができますよね。そういう意味では、深淵なる世界とは「自己理解の世界」とも言えるかもしれません。
──自己理解を深めていくことについて、怖いと感じる方もいると思います。知らなくて良いことに気づいてしまう可能性もありますから。
そうですよね。私自身も、前職の富士ゼロックスを辞めた直後は変な「カッコつけ」というか、プライドがあり、自分の弱いところを薄々感じながら見て見ぬふりをしていましたから。
自分の弱さを見つめないといけないのは、すごく怖いし、いやでした。ただ一度そこを見てしまって「実は自分はこういう人間なんです」と、自分から周りに言えるようになった時に気持ちよさも感じました。
肩の力も抜けて、周囲も助けてくれるようになった。今までよりも遥かに、動きやすく、パフォーマンスも発揮しやすくなったんです。この感覚がつかめると、さらにもう一度、深く潜りたくなるようになりました。
──「もう一度、深く潜ること」ができたきっかけは、何だったのでしょうか?
きっかけは、いろいろな人からのフィードバックかもしれないですね。「自己開示しているようで、自分を隠しているよね」と親しい人から言われて、徐々に自分のイケていないところが見えてくるんですよ。「そんなつもりはなかったけれども、言われてみれば…」と。
ただ、フィードバックを最初から素直に受け入れられたわけではなく、時間がかかりました。「そうか」と受け入れて自己開示できるようになるまで、3〜4年かかっています。それまでは本当に怖かったです。
イケてると思っていたことが、実はイケていない。それを受け入れなければならないのが、キツかったです。ここ最近で、ようやくできるようになってきたと思います。
学びを通じて再発見した「自分自身のエッジ」を超える
───2期に参加してみて概要を理解し、再び4期を受講したわけですが、結果として講座に対する捉え方に何か変化はありましたか?
これも感覚的な話になってしまうのですが。
真ん中に、氷山があるとするじゃないですか。自分の中の考え方の構図と、組織の構図が、いわゆる「相似形だな」と思えたことが大きな発見かもしれません。
「頭でわかっていても、動けない」「考え方が変わらない」というのは、やはり腹落ち度に関係していると思うんですね。学びながら受講生同士で話をしていると、腹落ちの度合いがどんどん深まっていきました。話していると同時に、いろいろな出来事がフラッシュバックするんです。
「あの人にこんなことを言われたな」とか、過去の記憶がパパッとひらめくわけです。ところが、最初は勝手にひらめくだけだったはずなのに、そのうちにだんだんと記憶同士がつながってくるんですよ。「あの言葉は、自分にとって意味があったんだ」と、意味づけをしていって“点が線になる”感覚がありました。
それと、これは副次的なものかもしれませんが、自分なりのリーダーシップをどう発揮していくかについても、学びを通じて再発見できました。
──「相似形」というのは、具体的にどのように感じたのでしょうか?
そうですね。私は今、東京コーチング協会に所属しています。そこでの会議での言動は、個々の関係性から大きな影響を受けている「相似形」なのだと気づきました。
トップにカリスマ性があるゆえに、その顔色を伺ってしまうメンバーもいます。その裏には、今まで組織内にあったルールや風土による多大な影響があるわけです。トップとメンバーとの関係性が、会議での発言内容にも反映されてしまっていました。
昔の私ならば「なぜ、そういう行動・発言をしてしまうんだろう?」と気になって、少し感情的に振る舞ってしまったでしょう。でも今は「行動・発言の背景に、何か大きな理由があるのではないか?」と、まず探るようになりました。
「それは良いことだと思ってやったんですか?」「どんな狙いがあるんですか?」と聞くと「実は…」と話してくれるんですよね。理由を聞くと、そりゃそうなるよなと。納得して、むしろお互いについて分かり合えるようになります。
その上で「実は私、最初に言われたときにこう感じたんです」と素直に伝えると、相手も「ごめんね。それは誤解されますよね」と言ってくれたりする。だからこそ、裏側が必ずあると思って聞くようにしています。
──講座での学びの中で、一番印象に残ったことは何でしょうか?
ロールプレイが印象に残っています。私自身がロールプレイをしてみて、確かに変わった実感がありました。「上司から怒られる営業部長」の役を担当した時、最初は頭が真っ白になってしまったんですよね。
ずっと黙り込んでしまって、何も言えなくなってしまった。これは、いつも自分がやっている行動パターンでもありました。「貝のように閉じこもって、やり過ごそう」みたいな状態です。
2期、4期と学びを続けてきた結果、今でははっきり言えるようになりました。「すみません、おっしゃっている背景についてぜひ聞かせてください」と。その変化は本当に、大きいですね。ずっと自分自身がスタックしてきた、硬直した部分がすっと一歩前に出せるようになりました。気まずい雰囲気になっても、普通に聞けるようになるんですよね。
──ここまでの話を伺っていると、学びを通じて、長瀬さん自体が「エッジを超えた」ように感じます。そのために何か意識をしたことはありましたか?
少なくとも「硬直するような、物事を生み出さない状態を打破したい」と思う自分の意志はありました。
かつては「何とか変えたい」というのは最善策ではないと分かっていても、もうこれしかないと思い込んでいました。でも違うアプローチをやってみれば、こんなに物事は前に開けるし、お互いもwin-winになれるじゃないですか。その場も含めたら、トリプルwinのアプローチですからもうやるしかないという感じですよ。
「このままじゃいけないな、これを変えたいな」のその先に、お互いを知って分かり合う“相互理解”があると私は思っています。スムーズなコミュニケーションが取れるように意識した結果、変に詮索して言葉選びに時間をかけるのではなく、思ったことをすんなり言えるようになったのかもしれないです。
ここまで話していて気づきましたが、私自身はチームがよりパフォーマンスを高めていけるところにすごく興味があるんですよ。だから、自分のやっていることがチームのパフォーマンスを高めているかという観点で見てみたい。その上で、徹底的に自分を変えていきたいと思っています。
講座参加者から受けた刺激を、コンサルタントとして活かしたい
──4期は2期よりも小規模な人数で開催しましたが、以前と比べて何か違いなどは感じましたか?
少人数の方が、より打ち解けやすかったでしょうか。ロールプレイも深めやすく、しっかり学ぶという意味では、少人数の方が進めやすかったと思います。その場の空気感も感じやすかったですし、演じている人の持つ背景も何となく想像が付きました。
大人数で開催した2期の講座では、いろいろな観点からの見方が聞けたので「そういう捉え方もあるのか」と新鮮に感じました。受講内容については大きな差はありませんが、大人数であればお互いの刺激は大きくなると思います。
──長瀬さんはコンサルタントとして、一歩引いた状態で組織と関わることが多いと思います。今回の学びが今後の仕事に、どのように活かせそうだと感じていますか?
組織の中に入っていく「第三者」でありたいとは明確に思っているので、ニュートラルに物を見ることに生かせるのではないかと感じています。
当事者として組織にどっぷり入ってしまうと、当事者同士の利害関係に巻き込まれて、守りに入ってしまうような気がするんです。全てを見るのは無理があると思いますから「第三者である私からは、こう見えています」と、フィードバックして伝えることは、非常に意味があると思っていますね。
強みも弱みも兼ね備えた、自分らしいファシリテーションを目指す
──組織開発・組織進化の入門編に立った長瀬さんですが「もっと深淵を見に行きたい」と思っているような印象を受けました。今後、さらに深めていきたい領域はありますか?
そうですね。学びよりも「アウトプット」を大切にしたいと思っています。担当しているクライアントに対し、スモールステップでどんどん試して行ったり。企業研修やコーチング、チームビルディングの入口で提案してみるのが、次のステップになります。
また、これから「チームコーチング」についても学び始める予定です。ファシリテーターのスキルアップとしても、組織進化の学びを深める意味でも、プラスになるだろうと思っています。
チームとして動く時に、お互いに攻撃しあっていたら機能しないんですよね。お互いが補完しあい、カバーしあう組織づくりが、やっぱり理想だとなと思っています。クライアント先でもそれが実現できれば、理想的です。
──長瀬さんの描く「理想」の実現に向けて、大切にしたいと思うことはありますか?
そうですね。関係の質の前の「場の質」じゃないでしょうか。仲良しクラブではなく、言わなければいけないことは建設的に言えるか。そして、言われてもちゃんと受け入れられるかどうかも、場の質につながっていきます。
そのためには、目的やルールの部分への配慮が必要になりますね。進め方も含めて「最終的にどのような状態になっているか」を共通認識として持ち、より良くする前提に立って話し合いたいです。みんながそこを意識するのと、好き放題に話すのでは、場の質は全然変わってきます。
本来は、社内にファシリテーターがいれば良いのですが、なかなかいないですからね。感情に走ってしまうのではなく、人間の理性や思いの部分を引き出すファシリテーションをしたいと思います。感じているのに、言語化できていない部分を引き出すことを大切にしたいです。
──最後に「組織進化の実践講座」を通じて得た気づきについて、教えてください。
自分の強み、弱みも含めた「自分らしさ」を活かして組織進化に携わろうということですね。誰かの真似事をしても全然伝わらないですが、自分の思っていることや感じていること、本当に信じていることは伝わります。
今までの学びを活かしてクライアントと関係性を築き、受け入れてもらえるようなファシリテーターになりたいですね。
昔は人をすぐに判断して「優秀か、劣っているか」みたいに見ていました。ダメなやつは「はい。もうじゃあいいよ」みたいな感じだったんですけど。
今は誰にとっても絶対にどこかに強みがあるし、そこを引き出してあげないといけないと思っています。自分で気づいてほしいと気長なアプローチをしていると、だんだんと変わっていくんですよね。こちらのかける言葉も変わりますからね。
──もし今、かつての自分に対して声をかけるならば、何と言いたいですか?
「かっこつけんな」でしょうね。「ポンコツさをちゃんと出しなさい」と。「そうじゃないと、周りが扱いづらくてしょうがない」と、ちょっと説教調に言ってしまうかもしれないですね。
単にポンコツだと自己開示するだけではあまり意味がなくて、どう捉えて動いてるのかまでセットで考えないとダメだよと付け足して伝えたいです。